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| u Column #004 最新IR手法(2001.10.10) |
| このコラムでなぜIRを取り上げるのか?疑問に思う人もいるかもしれないが、私自身もまさかIRとこのコラムが関係してくるなんて、思っていなかったということは最初に記しておこう。 IRとは、「Investor’s Relation」の略である。「企業と投資家の関係構築」という意味で、おそらく間違ってはいないはずだ。いまや企業にとって株価は、最も企業の状態を強く表す評価指標となりつつある。その株価を維持し、上昇させていくためには、それなりの戦略が必要になるのである。その手法として考え出されたのがIRである。現在、IRに取り組む企業は、コンサルティング会社や広告代理店、その他IR専門のシンクタンク等も含めて、多数存在する。まさに企業広報と切っても切れない関係になりつつあるため、広告代理店のIRビジネス進出は著しい。従来の商品を売るためのプロモーション戦略やマーケティング戦略と根本から違ってくる要素として、「企業そのものを売る」ということが挙げられる。そこには、リスク管理の概念から、企業イメージの訴求まで、企業と株主との間に生まれるコミュニケーション全般の戦略構築が必要不可欠なものとなる。 特に、近年の株式投資のグローバル化は、企業に対して戦略的なIR/PRを行わせる圧力となってきている。例えば、1990年以来の米国における国境を超えた株式保有高は、約5倍に成長し、株式投資がグローバルに展開されていることを示す結果となっている。このような状況の中で、企業は自社へ投資をしてくれる投資家の確保と、実際の資金提供を大規模に行ってもらえるだけの魅力的な事業内容のPRをする必要に迫られているのである。ここで重要になるのが実質株主調査と株主ターゲッティングである。この2つの指標は、まさにマーケティングで言うところの「利益をもたらす顧客の把握」と「明確な顧客ターゲット選定」そのものであると言える。現代の企業は、明確な企業PRを戦略的に活用し、自社への投資ストーリーを展開出来る力のある会社になる必要があるのである。 大規模でグローバルに展開する企業になればなるほど、その活動も大規模でグローバルなものとなる。この中で重要となるのが、「IRは経営陣の仕事という認識を持つこと」である。経営陣がIR活動の中で行うべきことは山のようにある。例えば、海外ロードショーでの明確なスピーチや積極的なディスクロージャーの推進、株価低迷の責任等枚挙に暇がない。 また投資手段の増加への対応も真剣に考える必要がある。株式を初めとして、債券・ミューチュアルファンド・401K等、投資家の投資手段は格段に増えてきた。このような状況の中では、様々なIR手法を駆使しないと網羅できない時代となってきたことを早々に認識し、投資家の信頼を得るためのプログラムの構築を急がねばならない。 では、いったいどんな手段があるのか?ここに来てやっと、このコラムでIRを取り上げた理由がわかるはずである。その理由とは、IRを円滑に進めていく手段としてデジタルメディアをフル活用していくことを提言したかったからに他ならない。実際にe-IRとして、手法としても確立されつつある分野である。 例えば、毎年企業から投資家向けに発行されるアニュアルレポートである。紙媒体による発行は既に一般化しているが、ここにデジタルメディアを活用した双方向の意見交換、いつでも閲覧できる徹底的なディスクロージャー等のコンテンツを加えていくことで、より円滑な投資家とのコミュニケーションを目指す。これからの時代の投資家への対応として重要なのは、ITの活用により力をつけてきた個人投資家への対応である。IR上、重要な指標である「株価のファンダメンタルな分析」「収益の質の分析(ROE等)」「過去の収益データ」「収益のPR」「経営陣の信頼性・プロフィール」等を、インターネットを活用し、積極的に提供していく姿勢が求められる。一般的な米国投資家の特長として、@企業戦略にきわめて高感度(リエンジニアリング・スピンオフ・ダウンサイジング等) A要求水準が高い B収益に対するインパクトに敏感 といった特徴が挙げられる。これらの特徴をうまく押さえたコンテンツ作りが重要なのは言うまでも無い。 また、インターネットを使った情報提供を行うということは、すなわちグローバル投資家と共生するこみとであると言える。ここで注意しなければならないポイントとしては、次のような点が挙げられる。@国内と海外で企業が株主向けに提供する情報に差異があってはならない。 A個人投資家と機関投資家で、企業が株主向けに提供する情報に差異があってはならない。この2点はとても重要なのだ。なぜなら、米国では「レギュレーション・フェア・ディスクロージャー」という規制があり、機関投資家と個人投資家で保有する情報に差異がないように、個人投資家を保護する内容となっている。これらは、今後おそらく世界標準になる だろう。こうした世界基準に自社のIR戦略を合わせて行く為には、経営陣の説明責任の徹底や株主にとってアクセスしやすい情報提供、株主の積極的な行動や発言への対応、企業行動の透明性確保等の明確なポリシーを打ち立て、それを実行していかなければならないのである。 ■e-IR、Webキャスティング、放送メディアへの対応 企業のIR戦略は、前述のように様々な要素や制約の中で、最大限の効果を追求していかなければならない。ここでは、放送メディアへの対応も例外ではない。原則として「企業からのメッセージは相互に影響しあう」という認識に立つ必要がある。株主向けIR用紙媒体、取材、企業広告、株主向け説明会、スポンサー活動等は、それぞれが個別に機能するのではなく、相互に関連を持つという認識をもつことが重要だ。その中でもインターネットの活用は増加し、より公平なIRが行われる基盤になりつつある。その結果、アナリストの仕事は、従来の企業情報を集めて分析するだけでは意味をなさなくなりつつあるのだ。 Webサイト活用の方向性としては、中期的には法定開示・PDFによる収益データの公開・検索機能、長期的には、ブロードバンド対応(株主総会の中継、新商品発表中継等)・リッチコンテンツの提供・デジタルテレビ対応等が現在のところ見えてきている。ただし、このような状況の中でも、紙媒体はなくならない。新たな選択肢としてのインターネット、もしくは、コンテンツやデザインの連携が必要となるのである。メッセージ性の高い広告に近いIRレポートを紙とWebの双方で展開し、ブランドイメージを訴求する会社も増加している。またWebキャスティングという手法も確立されつつある。この手法は、IR活動の全側面にて利用可能なものだ。企業と顧客の関係性構築で利用されるCRMのIR版といえば、わかりやすいかもしれない。Webキャスティングを使えば、中小企業までもグローバルな知名度を狙えるはずである。具体的には、Webサイトでユーザの動向を分析し、サービス・情報をどう利用しているかを把握(One to One 等) しながら、最適なコンテンツを投資家に合わせて提供していくことで、企業と投資家の関係を最良のものにしていく手法である。 Webコンテンツとして掲載すべき項目としては、@企業概要 A役員紹介 B株価情報(速報性を重視したもの) C業界情報 DアニュアルレポートのPDF化 E決算報告(動画配信) F主要財務指標(過去5年) G投資家向けFAQ HIRカレンダー Iアドバイザーについて(監査法人等) K証券会社のレポート掲載 L株主情報 M企業とのコンタクトページ などが挙げられる。また、次世代Webコンテンツとして取り組むべき項目としては、 @カスタムメイドページ化(ユーザとのOne to One) Aリッチメディアの充実 B重要情報の優先的掲載・表示 等が挙げられる。 デジタルメディアへの展開と、歩調を合わせるようにメディアミックスをプロデュースするのも効果的である。例えば、あらかじめ株主に向けた映像素材を製作し、それを放送メディアのニュース素材として取り上げてもらえるように展開する。更にWebサイトでも動画配信を行い、各メディアで一つのコンテンツが有機的に株主にアピールするような仕組みを作る。この手法が有効に機能するのは、新製品や新戦略の発表や、危機発生時の対応時だ。実際にトヨタは、新製品「プリウス」のヨーロッパ市場投入の際に、新製品の映像素材を製作し、それをヨーロッパの各メディアに配布、ニュース素材として活用するよう働きかけることで、複数のニュース番組で実際に好意的に取り上げてもらうことに成功した。これにより、広告・プロモーション以外のチャネルで、消費者や株主にアピールすることが出来たことは言うまでも無い。 さて、以上示してきたように、IRの手法は多様化しつつある。またその多様化により、これまで広告・プロモーションの世界で培われた各種テクニックが応用できる分野であることも間違いない。IRにとって、最も重要なことは投資家の視点を持つことである。投資家は企業の財務状態やROEの向上にしか興味が無いと言っても過言ではない。つまり、その投資家のニーズを満たすコンテンツを、デジタルメディア・紙媒体・既存媒体をフル活用して、提供していく姿勢が重要となるのである。日本企業の中には、未だにアニュアルレポートの中に、平均年齢65歳以上の役員の顔写真を並べているものが見受けられるが、そんなものは全く意味をなさないという認識を早々にもつ必要がある。また不必要なビルや、不必要な資産・投資もいらないと投資家は考えているので、それらを自慢するように報告するようなレポートもいらないのである。合理的な投資を行い、回収し利益を生んでいるか、それしか興味がないのだ。投資家は企業の経営陣が考えるよりも、ずっと合理的であるという共通認識をもってIRに望むことが、今後のIR成功の近道なのである。 |