freevers network トップページコラム>Column #---
u Column #016  必殺のクロスメディアマーケティング@〜B(2003.8.18〜2003.11.21)
その@  

最近、さまざまな企業の広報担当者と話をしているが、インターネットの重要度が以前に増して上がったというような話をされる方が増えてきた。テレビ・ラジオ・新聞に次ぐ媒体としてインターネットの媒体価値が高まってきているというような話は、これまで何度となくこのfreevers上でも行ってきたが、最近は媒体の中でも最重要に位置するものとして、企業のマーケティング戦略の中でも欠かせないものとなってきているようだ。

このことは、データでも如実に表れている。ビデオリサーチ社の調査によると、もっともインターネット利用率が高い20代から 34歳の男性の層では、夕方から夜にかけてテレビよりもインターネットの利用率のほうが高いということが分かった。

確かに、最近の自分の生活を振り返ってみると、インターネット以外の媒体に接している時間が非常に少なくなってきているということに気が付いた。仕事柄、 インターネットは最重要な媒体であるということもあるが、実際には帰宅途中の電車の中でも
携帯サイトにアクセスしているし、自宅に戻ってからもパソコンに向かうことが多くなってきたのである。自宅のパソコンでは、仕事とは関係ないWebサイトの閲覧や、友人とのメールのやり取り等に費やすのだが、このときにはテレビも一緒につけていることが多い。ここで重要なのは、あくまでインターネットがメインで、テレビがサブであるということである。昔「ながら勉強」という言葉があったが、現在のこの状況は「ながらテレビ」という感じだろうか。

1〜2年ほど前だったと思うが、アメリカのIT市場を調査する仕事をしているときに、アメリカ人が自宅でインターネットを使用するときにはテレビを見ながらという場合が多くなっている、というレポートを読んだことがある。そのレポートには、アメリカ
では家庭の奥深くまでインターネットが入り込んでいる、というような結論じみたものが書かれていたが、この状況がとうとう日本にも入り込んできたのかもしれない。そのころは、日本は文化が違うので、リビングにパソコンが入ることはないのではないだろうか?と考えていたが、実際には我が家でも既にリビングにはしっかりとパソコンが設置されてしまっている。

電通の調査によれば、昨年(2002年度)の日本のネット広告費は845億円。これは日本の総広告費の1.5%で、テレビCMの約23分の1にしか満たないという微々たるものである。これは、逆に考えると「まだまだこれからの市場」と言うことも出来るのではないだろうか。

さて、こういう状況をきっちりと把握した上で、最近話しをさせて頂くクライアントが、インターネットの重要性を認識しているのかどうかはわからないが、いずれにしても、インターネットをプロモーションの媒体としてフル活用していく戦略は、今後非常に重要になってくるだろう。

これから3回に分けて、インターネットを活用したデジタルメディア・プロモーションの最新事情をコラムで記載していきたいと思う。

 
そのA
■これまでのネットプロモーション

電通が調査した2002年〜2003年にかけての各メディアに対する企業の予算配分の推移を見ると、デジタルメディア以外で予算が伸びたものはない。2002年の広告費は、対前年比で115%だったが、デジタルメディアへの予算配分の増加傾向は今後も続いていくと予想される。

しかし、このような統計的データはともかくとして、マーケッターの方々が実際に現場で直面している生の声は、ちょっと食い違っているかもしれない。

広告代理店の担当者等が、最近クライアントによく言われているのが、既存のネット広告の効果を疑問視する声である。例えば「バナー広告のクリック率は非常に低く、広告媒体として機能しないのではないか?」というものや、「メールマガジンに掲載する広告は、ほぼ全て読み飛ばされているのではないか?」というようなものである。実際、バナー広告のクリック率は、実に数パーセントにも満たないのが実情であるし、メールマガジンに掲載されるテキスト型の広告のほとんどは、クリックされないままユーザーのメールソフトの「ごみ箱」に入れられているかもしれない。

このような状況にも関わらず、企業がデジタルメディアに期待し、デジタルメディア関係の売上だけが増加傾向にあるのはなぜなのだろうか?効果がなかったと言われているプロモーションの中身を分析してみると、そのほとんどが戦略的な企画を持たずに、ただサイトにユーザーを呼び込むために行っているものが非常に多いということが分かる。これまでは、皆手探りの中で、どのようなネットプロモーションを検討すれば良いかが分からなかったということもあって、実際に効果的なプロモーションとなった事例はほとんどない。広告代理店のクリエイティブ担当者も、優秀な人材はテレビやビッグイベント等のマス媒体を使用したプロモーション戦略の立案に関わっていたため、ネット関係で大規模なプロモーションを打てなかったという現実もある。

ただ、状況が少しずつ変わってきた。最近のブロードバンド環境の急速な進展や、携帯電話からのインターネット接続の増加等に伴い、ユーザー数の規模が急拡大したため、メディアとしての機能も十分果たせるだけの母数を確保出来るようになってきたのだ。例えば、携帯電話のネット契約者は2003年の5月現在の総務省の調査で6000万を突破したし、ブロードバンド接続可能な世帯数も1000万世帯を突破したのだ。実際、メディアとしてのインターネットのパワーは、既にラジオを超えつつあり、新聞や雑誌に匹敵する力を持ちつつあるという声もあるほどである。

このような環境の変化に伴い、インターネットで展開されるプロモーションの手法に
ついても、今年に入ってから少しずつ変化を見せ始めるようになってきた。

■これからのネットプロモーション

これまでのネットプロモーションについては、上記のような内容であったわけであるが、これからのネットプロモーションはどのようにあるべきか?それを考えてみたい。

メディアとしてのパワーを持ちつつあるデジタルメディアを効果的にプロモーション戦略に組み込んでいくためには、メディアミックス戦略が必要となる。これまで、広告戦略を練る時に基本と言われたメディアミックスの法則をいくつか
紹介しよう。

【広告戦略の展開時の基本コンセプト】
広告戦略を検討するときに、以下のようなコンセプトの基本となる法則がある。
・Attention(認知)⇒Interest(感心)⇒Desire(欲求)⇒Memory(記憶)⇒Action(行動)の「AIDMAの法則」や、「Colleyの法則(未知⇒認知⇒理解⇒確信⇒行動)」等で言われている消費行動のプロセスに添った形で、最適なメディアを選択し、プロモーションを展開していく。全体で統合されたプロモーション戦略を取ることを「メディアミックス」と呼ぶ。これまでは例えば認知のためにテレビCMや新聞広告等のマス媒体を活用し、 「理解」のためにイベントを実施し、「確信」を促すために雑誌やカタログを使い、「行動」の喚起のためにチラシやDM、店頭広告を打つ等の手法を取るのが一般的だった。これらを、デジタルメディアを絡めた戦略立案に応用してみると、下記のような内容となる。まずデジタルメディアの特徴を挙げてみる。

【デジタルメディアの特徴】
・ネットの持つ特性から「認知」「理解」「確信」を消費者に対してもたらすことが出来ると同時に、動的なコンテンツを有機的に活用していくことにより「行動」にも展開することが出来るため、広告キャンペーン自体を立体的に構築することが可能である。

これまでの広告戦略の基本と、デジタルメディアを活用したプロモーションを統合して展開することにより、その効果は更に高まっていくと考えられるため、最近ではそれを総称して「クロスメディア戦略」とも呼ばれていたりするのである。今後、ブロードバンドの環境下において、デジタルメディアを活用したプロモーションが進んでいけば、広告業界のこれまでのビジネスモデルがドラスティックに変わっていくことも予想される。現時点では、デジタルメディア以外の媒体の特徴も活かした形で各メディアとの連動を図ることで、より最適な戦略を検討する「クロスメディア戦略」が必須になっていくのは間違いないと考えられるのである。

通信と放送が融合すると言われて、非常に長い時間が経ったが、実際には融合ではなく融和というコトバが正しいのではないかと最近考えるようになった。「補完」というコトバで説明されることもあるが、補完的な関係ではなしえないものが、既存のメディアとWebの相乗効果によってもたらされると考えるのは、私だけではないはずだ。ブロードバンド環境の一般化に伴い、クリエイティブ性の高いサイトの製作のための技術的な環境も整ってきた。これからが、本格的な「メディアとしてのインターネット」の力を発揮してくる時なのかもしれない。私も含めたマーケッターの皆さんは、ぜひともこの流れの中で、効果的なデジタル・プロモーションを実施していってほしい。

 
そのB
3回に分けて連載してきた「クロスメディア・マーケティング」についても、これが最終回となった。この回では、クロスメディア戦略の実例等も交えながら、その効果について考えていきたい。

まず、クロスメディア戦略を考えていく上での基本的な情報を整理していきたい。

■各媒体の特徴
 クロスメディア戦略とは、既存のメディアとデジタルメディアをリンクさせることで、 最大の効果を狙っていく戦略であることは、第2回の特集で述べた。クロスメディア戦略を考える上では、各メディアの基本的な情報をまず抑えておく必要があるため、ここで簡単にまとめてみようと思う。

 (1)テレビCM

ほぼ全ての世代の全ての人々に「プッシュ型」で情報を配信できる最大の媒体。
このメディアを選択するメリットは、膨大な人に対して映像と音でインパクトのある情報を提供できること。デメリットとしては、15秒という制約があるため、商品やサービスの「理解」を促すのが難しい点。ほとんどの情報がイメージの訴求
や認知を狙った限定的なプロモーションとなってしまう。また、デジタルメディアの普及に伴い、特に若い人たちの層では「プッシュ型」の情報配信に対してそれほどの重要性を持っていないという意見も出ており、テレビの持っていた強力なメディアパワーの神話が崩れてきている。

 (2)ラジオCM

数百万単位のリスナーを持ち、音声によるCMに伴う商品認知効果も高いと考えられている。しかしながら、秒数の短さやビジュアル面での訴求力が全くないということから、テレビと同じように「理解」をもたらすことが難しい。

 (3)新聞広告

2002年の日本ABC協会発表のレポートによれば、読売1013万部、朝日826万部、毎日394万部、日経304万部と、デジタル時代となっても膨大な読者数を誇っている新聞媒体。全ページをめくる人が多いため、新聞の全面広告等で認知を狙ったインパクトのある広告出稿や、「理解」を促すための詳細な説明付の広告等、様々な手法が適用できるメディアである。

 (4)雑誌広告

よりセグメントされた層に対してアプローチすることが可能なメディア。手法としてはWebに最も近いメディアである。テレビや新聞等と比較すると、メディアパワーは弱いが、狙ったターゲットに届き易いという点では、最もセグメントされたメディアと言う事が出来る。

 (5)その他のメディア

その他のメディアとしては、屋外広告・SPツール・店頭POP等があるが、いずれも時と場所を選ぶことと、特殊なキャンペーンの中でオプションとして展開されるパターンが多いメディアである。

■クロスメディアで何が出来るか?

各媒体の特徴を抑えた上で、必要となるのはデジタルメディアとの組み合わせ方の手法の検討である。この部分については、WebDesigningの2003年8月号の記事を参考にして検証してみたい。

 この記事によれば、デジタルメディアの特徴は、
 ・認知拡大力
 ・ベネフィット理解促進力
 ・ブランディング推進力
 の3つであるという。それぞれの力について、事例を用いた興味深い説明があったので引用したい。

 まず認知拡大力についてであるが、サントリーが2002年末に行った「スグBOSSキャンペーン」での認知経路についての調査結果から、約2割の人が「ネットのみでの情報入手」だったことが分かった。この結果からは、今後ネットを使ったキャンペーンを無視することが出来ないということになる。また、マス媒体とネット媒体の双方に接触した人のキャンペーン応募意向が、他の層よりも高かったということも分かったのである。今後のキャンペーンの検討において、最大リーチを狙うためには、ネットは不可欠であり、更に他の媒体と絡めた相乗効果を狙う戦略が非常に有効となることが分かった事例である。

 ブロードバンドを活用した事例では、有名なBMWのショートフィルムがある。20億円のキャンペーン予算のほとんどをネットにつぎ込んだというこの一大キャンペーンでは、BMWのブランドイメージを認知させるために、ショーフィルムを企画制作し、インターネットでのみ配信した。もともと15秒や30秒の枠や表現上の制約の多いテレビCMではなく、ショートフィルムという手法を用いることで、BMWの世界観を多くの人たちの伝えることに成功した貴重な事例である。しかもこれはブロードバンド 環境が進展したからこそ出来ることであり、その意味でも非常に重要な事例となるのでないだろうか。

 また、ベネフィット理解促進力についてであるが、ビデオリサーチの調査によれば、「購入の決め手となった接点は?」という問いに対して、50%を超える回答を得たのは「インターネットの掲示板や情報サイト」「メーカーブランドのWebサイト」「店頭で商品を見て」の3つのみだった。もともと、ネットは受け手の意思に応じて情報を提供する形の「プル型メディア」であるため、商品の「理解」を促すのに適したメディアであると言われてきたが、これがデータでも裏付けられた格好だ。最近の消費者は、十分に比較検討した上で納得しないと購入まで至らないという傾向があるため、このトレンドにもマッチするのがネット媒体であると言うことも可能なのである。

 最後に、ブランディング推進力であるが、これは最近の広告戦略において非常に重要視されているブランド力を構築する力がネットにあるということである。「ブランディング」とは、「ある企業が社会にアピールし、受け入れられるに値する価値や信用を構築していく行為」であるとされ、企業の存在意義を示すことと同義とされるほどの重要度の高い考え方になりつつある。電通の調査によれば、このブランドイメージや印象に影響するメディアとして、「テレビ広告」「メーカーブランドのWebサイト」「雑誌広告」が上位3つの回答だったという。これを私なりに分析してみると、テレビ広告や雑誌広告が提供するブランドイメージは、企業の特徴を映像や音楽やビジュアルを用いて効果的かつ視覚的に消費者にイメージさせるときに有効なメディアであると考えられるのに対して、Webメディアの場合には、最近よく言われる「ユーザーエクスペアレンス」を提供することが出来るメディアと言う事が出来るのではないだろうか。サイトに訪れるユーザーに対して、その企業独自のコンテンツを提供することにより、ユーザーに「経験」を提供することが可能となり、企業のメッセージへの「理解」を深めることが出来るのである。また、Webサイトは様々な形態を伴って現在まで発展してきたが、その過程で様々な機能を持つようになってきた。それは、広告宣伝の要素であるし、販売や流通の要素であるし、商品開発の要素でもある。Webは企業のあらゆる活動を統合的に提供できるという面で、これまでの媒体のどれにもない全く新しい力を持つメディアであると言う事が可能なのである。企業活動そのものがブランディング活動であるとするならば、Webサイトはまさにそのブランドを構築していく重要なツールとなりうるのではないだろうか?

 WebDesigningの2003年8月号で紹介されている「クロスメディア戦略」の成功事例
 
 ・BMWショートフィルム
⇒アドバテインメントの先端を行く事例。BMWのブランドイメージ醸成のために、かなりの予算を投下して制作したショートフィルムがインパクトを持たせている。ショートフィルムを使ったことで、テレビCMの制約であったカーチェイスやスタント的な映像等のタブーに挑戦している。カンヌ国際映画祭の2002年のグランプリを受賞。

 ・サントリーBOSSキャンペーン
⇒浜崎あゆみを使ったテレビCM、ラジオCM、交通広告、新聞広告、各種バナー広告、店頭や自動販売機でのポスター、店頭POP等、あらゆるメディアを駆使。その後キャンペーンサイトへユーザーを誘導し、誰もが気軽に応募できる環境を整備。年間15億本の売上を誇るBOSSならではの巨大なクロスメディアキャンペーンだ。

 ・日産自動車 Web CINEMA TRUNK

 ・GAP