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u Column #017  ネットサービスリサーチの現状(2002.8.24)

最近のインターネットを活用したマーケティングリサーチの環境は、急激に変化している。様々な要因が考えられるが、大きく3つの要因が昨今のネットリサーチの現状を示しているといえる。それは、『グローバリゼーションの進展』『IT技術の普及』『プライバシー意識の高まり』である。

以下、それぞれのポイントとなる事例を抽出してみたい。
 まず、『グローバリゼーションの進展』に関しては、国内企業の中国進出等を支援するネットリサーチサービスが登場するなど、このところ動きが活発になってきている。進出先の国の事情を、特派員を派遣するだけではなく、客観的
データで分析したいという事情がこのあたりにあるようだ。このような状況にあるとき、インターネットを活用したリサーチサービスは、即時性や手軽さ等といった面で、これまでの海外のリサーチサービスと比較しても、非常に優れている。次に、『IT技術の普及』に関しては、現在のマーケットリサーチ会社の約6割近い企業が、インターネット・リサーチサービスに参入するといったことや、集計・加工・レポートティングといった定型業務の作業効率UPという側面からIT技術導入の動きが活発化してきている点が注目されている。最後に、『プライバシー意識の高まり』という点に関しては、住民基本台帳 を活用した科学的標本抽出法や無作為抽出による電話アンケート調査等の利用が難しい状況になりつつあるという事象が発生してきたことが挙げられる。特に電話アンケートはプライバシーの侵害だと感じる人は、日本マーケティング・リサーチ協会の調査によれば、約8割以上だという結果も出ている。法律上、適正な理由があれば住民基本台帳のデータを使用した調査というのは認められているにも関わらず、このような状況になったのは、やはり人々のプライバシーに対する考え方が進化発展してきたからに他ならない。しかしながら、今後もマーケットニーズの調査分析のための無作為抽出調査という手法は何らかの形で残していく必要があるため、この分野でのネットリサーチサービスの適用が模索されている段階にある。

さて、このような状況の中で、ネットリサーチサービスには注目が集まりつつあるわけであるが、下記にネットリサーチサービスの現状を述べてみたい。

まずインターネットリサーチサービスのメリット・デメリットは一般的に下記のように言われている。

・メリット
 低コスト
 スピード
 インタラクティブな調査設計が可能
 動画コンテンツの評価リサーチ等が可能

・デメリット
 標本の母集団の代表性が低い
 回答精度が低い
 回収率が不明
 インセンティブ提供に伴う「プロ回答者」の存在

■日本とアメリカでの市場規模    

次に、市場規模であるが、国内企業のリサーチコスト全体に占める割合は、まだまだ低いが増加基調にある。日本マーケティング・リサーチ協会の調査によれば、 クライアント企業のマーケティング・リサーチ費用全体に占める支出の割合は、10%以下という企業が過半数となっている。また市場調査会社を対象とした調査では、自社の売上に占めるインターネットリサーチの割合は5%以下と回答した企業が全体の6割を超えているという状況のようだ。
ただし、このような状況の中でも、従来の調査業務の中でのネットリサーチの割合は6割の企業で増加基調であるとも回答している。市場規模の調査によれば、日本の2001年度のマーケティングリサーチの全体の売上規模は1320億円、そのうちネットリサーチの売上規模は46億円という数字も出ている。

一方でアメリカでのインターネットリサーチの現状はというと、マーケティングリサーチ市場全体に占める割合は、1割から2割強と言われている。2006年にはシェア30%に達するとも言われている。また、世界規模で見た場合でも、マーケティングリサーチ全体の中でのネットリサーチの市場規模は2001年度で対前年比で27%の増加という数値も出ている。(ESOMAR Annual Study on the Matket Research Industry 2001より)

■アメリカでこれだけ市場が伸びている原因                                          

それまでのアメリカでの市場調査の主流が、RDD(ランダム・ディジット・ ダイアリング)と呼ばれる方法で、これはコンピュータで電話番号を無作為抽出 する方法であった。この方式をとることで、電話帳に記載されていない人も含めた 無作為調査が可能となるというもので、約30年ほど前からアメリカの調査市場の主流になっていたのだが、近年の電話調査による回答率は、プライバシーの考え方の変化から次第に減少傾向であるため、その有効性も疑問視されはじめている。ここに登場した インターネットが電話にかわって、市場調査の主流になりつつあるため、このような市場の拡大が起きていると考えられている。

■日本のネットリサーチ市場の現状

一方で日本では、電話調査は決してメジャーな方法ではなく、またそれ以外に特別な調査方法があるわけでもない。したがって、従来の方法の置き換えとしてのネットリサーチ市場という構図は出来にくい。もともとアメリカ企業では、経営者がスピーディな意思決定を求められる こともあり、ネットリサーチのスピード感がアメリカの文化的な背景と合っている ということも言えるが、遅かれ早かれ日本の経営にもスピード感が求められることは間違いないので、ネットリサーチサービスが市場を席巻するときも 近いと考えられる。

国内のクライアント企業がネットリサーチを実施した調査テーマとして、特に多く挙げたのが、
「消費・購入実態・消費者の態度・意識」(約8割)
次いで、
「新製品開発・コンセプト・製品テスト」
「既存製品の評価・検討」
の順となっている。

また、現在はそれほど実施されていないが、インターネット調査に向いているとクライアント企業が考えているのが、
「自社ホームページの評価」
「パッケージ・ネーミング」
「広告の事前テスト、コピー、CMテスト」
「自社製品のダイレクト・マーケティング」
となっている。

■国内のインターネットリサーチ業界の企業の顔ぶれ

・インターネットリサーチ専業
 インタースコープ
 http://www.interscope.co.jp/
 インフォプラント
 http://www.info-plant.com/
 マクロミル
 http://www.macromill.com/ 等

・オプトインメール系
 GMOメディアアンドソリューションズ
 http://www.gmo-research.jp/
 エルゴ・ブレインズ
 http://www.dreamcity.ne.jp/ergo/index.php
 アイブリッジ
 http://www.research-plus.net/service.html
 NTTナビスペース
 http://www.nttnavi.co.jp/index.html 等

・ポータルサイト系
 ヤフー・リサーチ
 http://research.yahoo.co.jp/
 インフォシーク・リサーチ
 http://research.infoseek.co.jp/survey/?svx=101510&svp=SEEK
 NTTエックス gooリサーチ
 http://research.goo.ne.jp/
 BIGLOBE
 http://dr1.biglobe.ne.jp/business/index.html
  等

・広告マーケティング会社系
 電通リサーチ
 http://www.dentsuresearch.co.jp/
 アサツーDK
 http://www.knots.ne.jp/
 日経リサーチ  等
 http://www.nikkei-r.co.jp/

■インターネットリサーチがもたらす数々の利点

宣伝会議2003年9月号に寄稿した、インタラクティブ・リサーチオーガニゼーションのビル・マッケロイ氏が述べるネットリサーチの利点を下記にまとめる。

・インターネットリサーチにおける母集団の代表性の問題は、米国におけるインターネット普及率が7割程度になった段階で、それほど重要な問題ではなくなった。一方で、インタラクティブな技術の導入や、電話調査と並行での調査結果が、ほぼ同等だったというような検証結果が多数あらわれることにより、ネットリサーチの信頼性は上昇傾向に
あるといえる。

・ネットリサーチの利点としては、
 スピード
 調査コストの低廉化
  対電話調査で約40%、対面接調査で65%のコスト削減
 レスポンス率の向上
  米国国内の無作為電話調査における回答率は、この4年間で20%から11%へ下落。同様の現象は日本や欧州  でも見られる。これと比較して、Web調査は過去10年間の間に多少の減少は見られるものの、概ね回答率40%   から50%を維持している。
 回答者の満足度のUP
  米国では、10人のうち8人が電話での調査がプライバシー侵害であると感じている。これに対して、ネット調査は   全体の15%の人がそのように感じているに過ぎない。

 というものがあげられる。
 
 
■今後のネットリサーチの方向性
 今後のネットリサーチの方向性のキーワードは、「アナログ手法とデジタル手法の融合」であると考えられる。いわゆるハイブリット化と言われている手法であるが、ネットリサーチのよいところとこれまでのリサーチ手法のよいところを組み合わせて、戦略的なリサーチ業務を扱える調査会社が今後生き残っていくカギになるだろう。適正なアウトソーシングは、クライアント企業の多様なニーズに応えていくためにも必要なことだ。

今後のネットリサーチで留意しなければならない点としては、下記のようなポイントがある。

・インターネットリサーチは、住民基本台帳や電話調査のような調査パネルが存在しない。そのため、今後の発展を見込んでいくためには、どのようにしてサンプルを集めたのかについての手続きを明確にする必要がある。また調査対象者の決定についても、どのようなプロセスで行うかを明確にし、そのプロセスに沿って実行していく必要がある。先にアクセスした人が自動的に対象者になるような自己選択方式はサーベイとは言えない。

・調査の実施については、協力した層としなかった層についても可能な限りデータを集め、協力しなかった層についてはその理由 までフォローしていくと更に良いデータが集まると考えられる。

・一般消費財を扱う企業の調査業務を行う場合には、やはり代表性を疑う必要がある。このように、クライアント企業のターゲット市場に合わせた思考の柔軟さが必要。

・新商品等の調査実施時の情報漏洩の問題は、非常にナーバスな問題なので、扱いには最大限の注意を払う。もしくは、完成前の製品調査をWebで活用するような提案は行わない等といった配慮も必要。


上記のような点をふまえつつも、メディアが主体となって行う短期調査やキャンペーンと連動した調査等のメディアミックス型の調査市場等が、ネットリサーチの得意分野と考えられるため、このような新規開拓を積極的に行いつつ、アナログ的手法との相互補完の関係を築いていくことが、今後のネットリサーチ市場の拡大のためには重要な要素となるであろう。